歯科医院経営コラム

【歯科医院経営の方向性は??歯科医院3つのスタイル】

いよいよ歯科医院を開業しようと思った時、まず考えなければならないのは、自らの診療スタイルをどうするかです。

 

①【保険診療偏重型】

敷居が低く老若男女問わず多くの患者を集める、保険診療を中心とするスタイル。飲食店でいえば回転率をより重視するスタイルです。

②【自費診療偏重型】

自らのこだわりをもって特殊な診療を行う、自費診療を中心とするスタイル。飲食店でいえば、顧客数を絞って利益率を重視するスタイルです。

③【二刀流型】

利益率の高い自費診療を行いながらも、効率化により回転率を高めてゆく、いわゆる「二刀流」のスタイルです。

 

それぞれのスタイルのメリット、デメリットを紹介していきましょう。

 

 

①保険診療偏重型

メリット 

・診療費を国が払ってくれるため、確実な回収ができる。

・訴訟リスクを低減できる。

普通の会社では、商品を納入してから実際に費用を回収するまでに、タイムラグがあることが大半です。しかも、必ず払ってくれるとは限りません。手形や掛金の回収は、経営者が最も気を配らなければいけないことの一つです。

歯科医院の経営を保険診療メインで考えたとき、国が診療費を肩代わりしてくれるので回収の心配がない、というのは大きなメリットです。また、診療の手法や基本的な方針は国が担保していると考えることもできます。保険診療のルールに従って診断・治療したなら、それは歯科医師の個人的な判断ではないといえるため、訴訟やクレームのリスクも少ないと考えられます。

 

デメリット

・保険点数はこの数十年ほとんど値上がりしておらず、利益率が低い。

保険点数の据え置き、これこそが日本の歯科医院の経営が苦しくなった最大の理由でしょう。つまり平均的な患者数では歯科医院としての利益が著しく低いため、より多くの患者を集める広告や工夫が必要になるのです。

たとえ患者が多くても、効率的に回転させるためのスキームは必須です。また、スキームを実現させるために最低限のユニットや待合室などのハードを整える必要があり、院長以外の勤務医、歯科衛生士、歯科技工士など人材の確保も他のスタイルより重要になってきます。その体制を維持するということが、近年の歯科医院の最大の課題でもあります。

 

 

②自費診療偏重型

メリット 

・歯科医院側で金額を決められるので、利益率が高い。

保険診療はその性格上、大多数における最も効果的な診療を行うことを目的とします。患者一人ひとりに、最も効果的な診療を保証するものではありません。

個別のケースに最適な治療法で、かつ保険診療ではカバーできないもの、それが自費診療にあたります。

自費診療の対象は歯科技工物のような補綴物だけでなく、インプラントをはじめ特殊な機器を用いた外科手術など、多岐にわたります。費用設定に決まりがなく、患者側との同意があればよいので、医師の技量によってはかなり高い利益率が見込めます。

 

デメリット

・初期投資・ランニングコストは保険診療を中心とするよりもはるかに高額になる。

・高い金額に見合うシステムづくりが必要。

保険診療と同じ内容でも、患者が同意すれば自費診療として高い金額を請求することは可能です。しかし通常、自費診療には相応の機器、そして技術・内容が要求されるでしょう。

例えば歯科医院の広告では、よく「最新の医療機器を取り揃え」という文言を目にしますが、「最新」を謳うには、機器をメンテナンスするための費用が常にかかります。もちろん医療技術もすぐにバージョンアップしますから、日々の情報収集と研鑽をシビアに行う必要があるでしょう。何よりその技術や特殊な治療に高額な費用を払ってもらうためには、納得できるシステムであることが大切です。「上手な治療ならば患者はわかってくれる」と思い込んで、落とし穴に嵌まってしまったという例はよくあります。

そして自費診療を選択する患者は、事前に多くの情報を収集し、比較・検討している場合がほとんどです。つまり歯科医院側も、診療内容に合わせた宣伝広告や適正な情報開示など、集患戦略が必要なのです。売り物が異なれば、売り方や宣伝方法も異なるのは商売の基本といえます。

さらに押さえておきたいのは、診療の独自性が高いため、企業価値の第三者評価が難しいということです。自費診療中心の医院は、事業継承継医院譲渡において金銭取引時に不利になりがちです。年間売上5千万円の医院でも、保険診療を中心とする医院と自費診療を中心とする医院では、企業価値に大いに差が生じます。個人の診療技術を引き継げないことや高額な診療のアフターフォローはリスクとして顕在化しているからです。

 

 

③二刀流型

開業セミナーへの参加や歯科医院の経営の本を読むなど、歯科医院経営に真摯に取り組んでいる先生ほど、保険診療と自費診療のいいとこ取りを狙ったスタイルを目指すものです。

しかし長いプロ野球の歴史でも投打の二刀流を達成できた選手が貴重であるように、当然、二兎を追うことによるリスクは存在します。

二刀流を成功させるためには、開業準備段階からの緻密な経営計画、そして熟練した歯科コンサルタントによる支援が必要になるでしょう。理想的な歯科診療を行うには優秀な歯科衛生士や歯科技工士の協力が不可欠であるのと同様、理想的な歯科医院経営のためには院長を助けるプロが必要なのです。