歯科医院経営コラム

【成長期~安定期における歯科医院経営】

歯科医院の売上は、機器や設備といったハードではなく、歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士といったソフト、すなわち人材に大いに依存しています。歯科医院のスタッフ数はさほど多くないため、代診の先生の人柄や歯科衛生士の加入・流失などによっては、売上ががらりと変動することがあります。

これこそが歯科医院の抱える最大のリスクです。良質な人材の維持がそのまま企業成長に連動するという独特の問題があり、一般的な大企業における成長の4相※は当てはまらないともいえます。

とはいえ、売上あるいは営業利益の時系列データから今後の成長予測を立てることは、経営者として必要不可欠です。

 

※成長の4相 「創成期」「成長期」「安定期」「終焉期」

 

《1年を4期あるいは6期に分けて経営状況を分析する!》

良い時期、悪い時期を明確にする

 

一般に、企業の業況は年1回の決算に伴う損益計算書によって評価されます。それにならって、歯科医院においても決算期の数値を見て経営判断を下せばよいと考えがちです。

しかし、歯科医院は他に比べて季節変動が少ない産業です。そこで年間ではなく、1年を4期あるいは6期に分け、前年や一昨年の同期と比較することをおすすめします。そうすることで、より迅速でより効果的な対策がとれるようになるでしょう。

例えば売上を年成長率+3%と把握するのではなく、4期に分けて第1期の成長率が-3%、第2期±0、第3期+12%、第4期-6%と細かく分析すれば、増減の要因を特定しやすくなります。経営者である院長先生の肌感は非常に大切ですが、1年間という長期スパンでは肌感は鈍化してしまいがちです。4期に分けることで、肌感とデータが効果的に擦り合わされ、問題点や思わぬ成果の発見につながります。

こまめな検証は、経営や問題の早期解決にも役立つのです。

 

 

《既存戦力での成長率は年10%以下にとどめる》

疲弊による人材流出を防ぐ

 

歯科医院において、売上または営業利益率の成長は、4半期において+3%、年間でも+10%以下にとどめるべきです。

儲かれば儲かるほど良いのにおかしなことを、と思われるかもしれませんが、ここに挙げた数値はスタッフの増員やハードやシステムの変更がない、つまり効率化や頑張りにのみ依存した場合です。

人材こそは、最も大切な資源です。たとえ順調に売上が伸びていたとしても、それが古参スタッフの頑張りによるものであったなら、いずれ歪みが生じます。安定期(開業して5、6年、開業当時からのスタッフで維持していると仮定)において前述の数値を超える伸びを示しているならば、新たな人材の雇用を検討するべきでしょう。

職場があまりにも忙しいと、スタッフの不信や離職を招きかねません。一時的な報酬アップなどでは限界があります。給与・賞与を増やしたのに、古くからいるスタッフが「辞めたい」と漏らすようならば、もはや待ったなしです。対策を講じなければなりません。

もし人的補填が難しいのならば、ハードを導入して人的負担を減らす(機械化)、あるいは部分的にアウトソーシングするなどを検討します。目先の利益にとらわれずに長期的な視点に立ち、適時適切なリスクヘッジを行うことこそ、経営者として必要な判断なのです。

 

 

《年間3%の売上減を放置してはいけない》

 

逆に、本来ならば成長期~安定期であるはずなのに、売上が減っているという場合を考えてみましょう。

年間で3%減少すると、おおよそ7年で20%の減少となります。人件費やテナント代、リース料などの固定費がほとんど変化しない中、20%の売上減は莫大な損失となって経営を圧迫します。固定費の減額が見込めず、かつ年間で3%の売上減が継続するようならば、すでに経営危機は露わになっているといえます。

売上減の原因には、①優秀な従業員が辞めた、②近隣に強力なライバルが出現した、③自身の病気など不慮の事態が発生した、などさまざまな事柄が想定されます。

しかし本当の問題点は、その原因への対応ができなかったことなのです。想定される問題やリスクに対して事前に備えておき、いざ問題が発生しても適切で迅速な対応ができていれば、経営危機に陥ることはないでしょう。一時的な売上の減少が生じても、回復させていくことは可能です。

それでも思いもよらない事象が発生してしまうことはあるでしょう。もう回復が見込めないとなったならば、決断を下し、クロージングに向けてどのように手を付けていくかが大切になります。